就労

ベトナム労働者の最低賃金システムは持続可能か?

来年予定されている賃金の引き上げ額は、幸運にもその引き上げられた賃金を受け取る人々の生活賃金よりもはるかに低いものです。現在のベトナムの労働者の最低賃金はシステムは10年ほど前に作られました。2005年終わりから始まった大きなストライキの波は、インフレであったにもかかわらず、7年間も据え置きされていた外資系企業の工場の最低賃金への抗議を生み出しました。

その結果、最低賃金は40%引き上げられ、労働者・雇用者・行政それぞれからの意見をもとに、3部構成の最低賃金システムが作られ、それが今日に至っています。毎年、国の労働組合連盟、ベトナム労働総連合、労働・傷病兵・社会省、そしてベトナム商工会議所の代表者たちが一堂に会し、翌年の最低賃金価格について協議、決定を行います。

最低賃金は4つの地域によって異なり、各地域の生活コストを反映したものとなるようにされています。地域Iはハノイやホーチミン市で、最低賃金も最も高く、また、地域IVは農村地帯で、最低賃金も最も低く設定されています。

2018年の最低賃金レベルはすでに決定され、2017年よりも6.5%上昇することとなりました。それに伴い、地域Iの最低賃金は、ひと月あたり3億9,800万ベトナムドン(175米ドル)となる予定です。地域Ⅱは、3億5,300万ベトナムドン、地域Ⅲは3億900万ベトナムドン、地域IVは、2億7,600万ベトナムドンです。

最低賃金システムは、労働者にその年の公正な賃金の引き上げを保証するための、安定的な手段であるべきものです。けれども、このシステムそのものに大きな問題が浮き彫りとなってきています。一番わかりやすいものは、賃金レベルが生活に必要なレベルに到達していないことです。

ハノイに拠点を置く雇用関連のリサーチセンターが行った最近の調査では、グローバル生活賃金連盟のために実施されたもので、ホーチミン市の生活賃金が6億4,400万ベトナムドンとなることが分かりました。これは明らかに、2018年に労働者が受け取る3億9,800万ベトナムドンの最低賃金を大きく上回ります。

ベトナムの農村地帯の生活賃金を400万ベトナムドンをやや下回るほどと導き出したこのプロジェクトは、地域IV の2億7,800万ベトナムドンでは遠く及ばないが、2018年から毎月保障されるでしょう。2016年の生活賃金の計算が正確だったことから、さらに生活賃金は上昇していると言えるでしょう。

低賃金で働く人々の最低賃金と必要最低限の生活費のギャップは変化しつつあります。そして現在の最低賃金システムでは、もはや構造的に最低賃金の引き上げを行うことができなくなるでしょう。トンドゥックダン大学で労使関係学、および労働組合学を指導するジョー・ベリー氏とヘレナ・ワーセン氏は、この問題について研究を続けてきました。2人は公的に最低賃金を固定化する手順に強く焦点を置くことに批判的です。最低賃金の金額やそれを算出する方法についての正式かつ、技術的な議論は、これまで、力のある利害関係者の中でのみでした。世界的な事例を見てみると、アメリカの「ファイト・フォー・フィフティーンダラーズ」では、ベトナムでの現行の最低賃金改定手順は不適切だと議論されています。さらに、その手順では労働者に生活賃金を保証するために必要とされる大きな賃金の引き上げには決してつながらなず、逆に社会運動や草の根運動が必要とされるというのです。

例えば、現在の最低賃金システムを最初に作った行動主義などです。また、最低賃金システムに焦点を置きすぎることへのもう一つの問題は、賃金を必要とするだけでなく、労働者はその他の福利厚生なども必要だということです。雇用者側の社会保険負担や、伝統的なテトボーナスなどです。

テトボーナスは、旧正月の最後に13か月分の給料が支給されるボーナスで、多くの人が規制のための旅費や家族への贈り物に使います。多くの雇用者が最低賃金の引き上げに伴って、人件費削減のため福利厚生をカットしています。テトボーナスも雇用者が被雇用者に支払いを行わないか、現金の代わりに余剰株で「支払う」ため、徐々に失われつつあります。社会保険基金は大きな問題となっており、まもなく枯渇してしまうでしょう。多くの雇用者が規則に反して基金への支払いを怠っているのです。

最低賃金に関しては、法的に未解決の問題もあります。

例えば、最低賃金のポリシーがどのように、そしてどれほど多くの労働者を守ることができているが不明瞭であるということです。パートで働く人々が特に問題となっています。

「労働法典の条項34.3では、最低賃金システムで保護されることも含め、パートタイム労働者はフルタイム労働者と同様の権利と義務を所有すると述べられています」と労働法専門家でホーチミン市の顧問のドーハ氏は指摘します。

「しかし、実質的な問題があります。毎年発表される最低賃金レートはフルタイム労働者に向けたものです。」

「パートタイム労働者の最低賃金の換算法についての明らかな規定やガイダンスはありません。」と、同氏は述べています。そうすると、実際には雇用者が自由に、パートタイム労働者にちょうど良いと思われる最低賃金を決めることができるのです。ドーハ氏はまた、最低賃金政策に守ってもらいたいなら、労働者側は労働契約書の取り交わしが必要となると付け加えています。

ところが、ほとんどの人がこの労働契約書というものを持っていません。多くの人々が被雇用者と個人事業主の間の不明瞭な立ち場で働いているのです。

非正規雇用の多い労働市場で働く人々、例えばグラブドライバーやウーバードライバーなどは労働者としては分類されず、安定した収入の保証はされません。さらに、ハ氏はたとえ労働者側が明らかに雇用関係にあったとしても、「今は多くの雇用者が被雇用者と市民契約を交わしています」と続けます。

市民契約は「労働基準から逃れるためのもので」、法的に労働契約とは異なります。このことがさらに、最低賃金が労働者を守っているかどうか法的に不明確な状況を作り出しているのです。

最後により根本的な問題として挙げられるのは、ベトナムとグローバルサプライチェーンとの本質的な関係についてです。国際労働機関のベトナムのチャンヒーリー事務局長は最近のインタビューで、輸出製品生産業の会社はよく最低賃金の引き上げと海外のバイヤーからの要求の合間の落とし穴に陥ると指摘します。

衣類のような、海外のバイヤーが喜んで製品に支払う金額は、何年も変わらないままです。同時にバイヤーからの、効率の向上や工場の衛生面、安全面の改善というような企業の社会的責任を果たすための要求もされます。けれども、製品にかかるコスト増加や、工場運営費の節約実現のために、サプライチェーンのトップに君臨する多国籍企業が意欲的に支援を行うことははありません。

ベトナムの多くの工場では、上からは海外バイヤーによる収益の圧迫、下からは最低賃金の増加を求められているのです。その結果、工場側は最低賃金の引き上げには反対の立場を取ると同時に、そもそも引き上げが不可能という状況にあるのでしょう。現行のベトナム最低賃金システムは、各年で公正な最低賃金引き上げの交渉を行うための安定的、かつ継続可能な方法を提供するために作られました。

このシステムは、まったくないよりはましですし、労働監督者や検査官はその交渉をしっかり監視しています。しかし、最低賃金交渉に焦点を当てることで、見過ごす、あるいは隠すことのできない根深い問題が浮き彫りとなります。もしそれらの問題に注意が向けられていないなら、誰かがそうしなくてはなりません。

ホーチミン市が就業時間の分散化の拡大を検討

ホーチミン市人民委員会は同市開発研究院(HIDS)に、学校、および就業時間の分散化の効果を早急に再評価することを求めました。また、都心部で悪化、拡大の一途をたどる交通渋滞についての実現可能な解決法を提案することも同時に課しています。

8月の会議で市人民委員会のグェンタンフォン委員長は、HIDSを任命し、9月には実現可能な解決策を提案するよう要求しました。この要求は9月5日に行われた社会経済ミーティングでも繰り返されています。時間交代制のシフトワークシステムが採用されたのは、2001年のことです。2007年10月、市人民委員会はこのシステムを交通渋滞や事故の削減のための緊急プロジェクトに取り入れました。しかし、市議会議員が認めなかったため、人民委員会は地方自治体や、一部の地域、一部の地区などで実施したのです。

市教育訓練課は、小・中・高等学校で学習ステージごとに15分ずつ時間をずらして授業を行う方法を採用しました。さらに、教育産業は同じエリア内の学校に授業時間をローテーションでずらして交通渋滞を緩和させるよう協力するよう求めました。その後、学校付近の交通渋滞は実際に緩和されたため、この解決策は効果的であることが証明されました。

ホーチミン市輸出加工区当局(Hepza)によると、ほとんどの企業は行政が定めた業務時間に従ってシフトを組んでいるとのことでした。そのため交通渋滞は業務開始時間の30分前か、終了時間の30分後に、規則的に発生していました。3シフト制を導入した企業が出たおかげで、状況は改善されています。011年以降、Hepzaは16の工業地帯と輸出加工地帯で、業務時間を変更し、ローテーション式のシフト体制にしました。しかしこの体制を実施するにあたり、企業の生産活動と同様、子供の通学の送迎など労働者の日常生活にも影響を及ぼすという難点も生じているとHepzaの代表は述べています。

目下、関係当局もローテーション式シフト体制をいくつか提案しています。1つは学校の時間は変えずに、政府当局の就業時間を変えるというものです。人民委員会、政府当局、社会政治団体全てが一続きに時間を30分ずらし、2シフト制で業務を行います。90分だった休憩時間は60分に減らされます。

朝の最初のシフトは午前7時から11時30分までとし、その次のシフトが午前7時30分から11時30分までとします。午後は、午後12時30分から4時、その次は午後12時30分から4時30分までのシフトとなります。この変化は役人や公務員、労働者に影響を及ぼすものですが、程度としてはそれほどではないでしょう。現在、12万2,000人の人々が政府当局や公共サービス機関で働いています。

就業時間を変更することで、ラッシュアワーのピーク時の自家用車の30~60%、およそ3万6,600~7万3,200台ほどの減少が見込まれます。

このような方策を取りますが、当局は公務員や企業が午前7時から午後4時30分までは確実に働くようにするつもりです。

HIDSの代表者はによると、この方策により交通渋滞でのダメージがなくなることで、高い経済効果がもたらされるとのことです。政府当局が提案するもう一つの解決策は、市の人民委員会、当局、軍の就業時間や、学校の授業時間の再編を行うことです。

公務員の就業時間、および学校の授業時間は、月曜日と金曜日は午前8時から午後12時、午後1時30分から5時30分とし、火・水・木曜日は午前7時30分から11時30分、午後1時から5時とします。

この方法では、月曜日と金曜日の渋滞の改善が期待できます。月曜日と金曜日はホーチミン市を離れたり、帰ってきたりする人々でいつもひどく混雑しているためです。けれども、これでは月曜日と金曜日の子供たちの学校の送迎が困難となってしまいます。

そのため関係当局は保護者や学校で働く教師達から意見を求める必要があります。これまでに述べた方策は市の人民委員会に提出、認可に先がけて改善を行っているところです。