ベトナムその他

アジア貿易交渉、トランプの打撃からTPP回復で失速

アジア圏の16か国の交渉担当者達は競うように、貿易協定をまとめると、また思いもよらぬ脅威に直面することとなりました。9ヵ月前に消滅したと思われたアジア貿易協定に対抗する貿易協定が勢いを盛り返しているのです。ドナルド・トランプ氏は大統領となってすぐに、アメリカ主導による環太平洋パートナーシップ協定(TPP)からの離脱の決定を発表しました。その後アメリカは東アジア地域包括的経済連携(RCEP)にその重点を転換させています。

現在RCEPの交渉は停滞しており、TPP加盟国だった残りの国々がTPP復活を図り、協力に努めています。首席交渉官によると、RCEPは今年終わりまでの合意を目標としていて、中国、インド、日本は含まれ、アメリカは除かれますが、実現が困難なようです。しかし、イマン・パンパグヨ氏の目下の関心はRCEPの加盟国の中にTPPを優先してRCEPから脱退する国が出る可能性があることです。TPP協定には中国が含まれておらず、アジアでの勢力を伸ばしている中国に対抗する砦として見られていました。

「おそらく今後、年末に向けて誰かが『もう十分だ。我々は加盟しないことにする。またの機会に参加します』と言い出すでしょう」と、パンバグヨ氏は9月19日火曜日にジャカルタで行われたインタビューで述べました。しかし、脱退の危険がある国々の名前の明言は避けました。

「貿易交渉委員会の議長として私は基本的委任権を行使するつもりでいます。」

「参加予定の国がすべて参加し、各国が合意可能な解決策を見つけられるように努めます。」

パンパグヨ氏は続けます。

「そうでなければ、この交渉をまとめるのは困難です。」

トランプ氏のTPP白紙撤回は、就任前の画期的な貿易政策で、政策をRCEPに転換しました。しかし、TPP加盟を表明していた11ヵ国、主にオーストラリア、日本、ニュージーランドは、法案の実現に向けて懸命です。TPP加盟各国の貿易大臣たちは、ベトナム、ダナンでのアジア太平洋経済協力サミットで、将来的な取引の提案を各国首脳陣に提示しなければなりません。

「我々は11月のダナンサミットでの何らかの形での収穫を目指して尽力しています。」と、20日水曜日にジャカルタで行われたインタビューで、オーストラリア貿易大臣のスティーブ・チオボー氏は述べました。

「それが目的です。」

直接交渉に関わったものの、内談についての発言のため名前を伏せることと引き換えに高官が次のように述べました。中国側の見解は、RCEP交渉は日本との関係において危機に直面しており、この取引を無理に通す事を願ってはいないことを示しているというものです。

関税といわゆる「貿易外収支」、つまりサービスなどの無形物の輸出入についての交渉において、日本が示した条件は中国代表団にとってRCEPメンバーの中で最悪のものと感じたと、その高官は述べています。最後の話し合いの後、中国側は落胆の様子を見せていたと続けます。

RCEP加盟国の経済発展の段階は異なるため、この取引には単に「ハイスタンダードな」協定を目指すのではなく、参加国それぞれの協力が求められていると、中国商務省のガオフェン報道官は先週話しました。日本の安倍晋三首相は、9月20日水曜日のニューヨークでの演説で、オーストラリア貿易大臣のTPPの推進の必要性については述べましたが、RCEPへの言及はありませんでした。

「我々はTPPの早期発効を目指し、交渉を加速させている。」

「自由かつ、ルールに基づいた公平なマーケットを、世界へと広げていく」と、安倍氏は話しています。

TPP加盟国は9月後半に東京での会合が予定されています。日本の首席交渉官を務める梅田和義氏は代表団に「TPPの早期批准」が重要であると伝えました。シンガポールはRCEPに身を任せる事で一貫しており、交渉では順調な進展を見せていると、通商産業省がe-mailで声明を出しています。その他加盟国と協力して、できるだけ早く、確実で通商上意義のある合意を目指していると述べました。

TPPは、労働権、環境基準、知的財産の保護を求める中で、長く続けてきた貿易取引の域を超えてしまい、物議を醸しています。RCEPは、南東部のアジア諸国が含まれれおり、焦点はもっぱら関税についてです。中国とインドが加わていることによって、RCEPの交渉はなかなか進みません。シンガポールに拠点を置くアジア貿易センターのエグゼクティブディレクター、デボラ・エルムス氏によると、議論は関税の免除の割合についてで止まってしまっているとのことでした。インドにとっては中国への市場開放への不安の中、「インドがどこでその存在を誇示するか」が重要となっていきます。

「RCEP参加の16ヵ国には各国間での取り決めが存在せず、現在交渉下にあるいくつかの地域に生ぬるい関心があるのみです。」

「そのような状況での各国の市場を開放することは象徴的で、大きな問題と言えるでしょう」と、エルム氏はe-mailで語りました。

インドはサービスの自由化の拡大、国内総生産の50パーセント以上に貢献できるセクター、そして国際労働力の移動を欲しています。また、490億米ドルに昇る、中国との貿易赤字拡大の救済措置を含む条件合意に関心があります。

「もしインドがRCEP合意の下の全てを申し出たりしてしまったら、対中国の貿易収支についての心配の種がますます増えてしまいます。」

「インドは中国に対してもっと用心した方が良いでしょう。」

「同時に、サービス部門に関しては、インドは非常にアグレッシブです。」とパムバグヨ氏は述べました。RCEP交渉の行き詰まりのため、大臣達は最近マニラで行われた会談の後、次のような声明を出しました。「交渉の着地点は互いに納得できるもので、全加盟国が実現可能なもの」が求められるというものです。これは、市場のアクセスについて言及したものですが、まもなく取引への過剰な要求部分の排除を行うことでしょう。

パムバグヨ氏は次のように語っています。

「今必要なことは、16ヵ国が現実に立ち返り、それぞれ実現可能な事と、不可能なこと見極めることです。」

「我々はこの協定を生きたドキュメントとし、取り決めや取引の改善の道が伴っているものとして、成功させなければなりません。」

貧困地域でボランティア活動を行う若い医師

医大を卒業した多くの人々は、ハノイのような大都市で働きたいと願うようですが、フンイエン省出身のグェンチェンクェットさんは違います。彼が選んだ職場は北方の山岳地帯で、そこで暮らす恵まれない人々のために働くというのです。「将来的に結婚する時が来たら、山岳地帯の人々に誠心誠意のケアを施すのは難しくなると思うのです」と、クェットさんは話します。大学最後の年だった3年前、クェットさんは山岳地帯や国境付近、離島などの医療体制が整っていない地域へ医者を派遣するプロジェクトについて耳にしました。その後しばらく悩みましたが、身内からの承諾を取りつけ、このプロジェクトに申し込みました。

クェットさんは、ラオカイ、ソンラ、バックカン、ディエンビエン北方の省に最初に派遣される7人の中の一人です。外科医として2年の教育をうけ、28歳となったクェットさんは、今年7月にラオカイ省の北の山岳地帯にあるバックハー総合病院に赴任先が告げられました。

バックハーは、面積6万8,000㎡ほどのバックハーの人口は、約6万4,000人で、そのうち85%が少数民族です。

この地域は医療サービスの需要を満たすことができず苦労しています。医師が40人しかおらず、1万人あたりに6.6人の医者しかいない計算になります。山岳地帯特有の地形もまた、困難な状況の要因です。

バックハ―総合病院のグェンヌートゥアン副院長によると、病院は山岳地帯に位置していますが、バックハー、シンマン、シマカイの3地区の人々に医療を施しています。そのため、病院はいつも患者でいっぱいです。副院長率いる外科部門もしょっちゅうオーバーワーク状態になっています。外科部門の病床数は50床ですが、外科医は2人のみで、さらに1人はまだ訓練課程のため、副院長は1人で働かなければなりませんでした。

「手術で1日に4~6回も執刀しなければならない日もあります。1つの手術を終えてくたびれていても、また次の手術の指揮を執らなければなりません。」

「長時間の立ち仕事で脚の感覚も麻痺してしまいます」と、トゥアン副院長はベトナムプラスオンライン新聞で述べています。

彼によるとクェットさんがその負担を和らげてくれ、これまで都市部の病院に頼まざるを得なかった症例の対応も改善されるだろうということです。

「3年前に病院は内視鏡手術の設備を整えましたが、医師不足のため、ほとんど使われることはありませんでした。」

「これらの設備を活用して行う手術は確実に増えていくでしょう。」

グェンキムフオン院長は、設備自体は新しいものを導入してきたのに、病院はいつも医師不足だったと話しました。

「この10年で初めて若い医師がやってきてくれました。」

「クェットさんが来たことにより、病院がさらに進んだ技術を用いることができるようになることを願ってます」と加えて述べました。

バックハー病院に赴任した頃を振り返り、クェットさんは次のように話しています。

「最初の週は朝から晩までずっと雨だったので、ホームシックが悪化してしまいました。職場環境の変化とバックハー地区の静けさで、気持ちが不安定になっていたのです。」

彼は赴任して最初の週は病院からほとんど出なかったそうです。午前中は診察、午後は手術を執刀し、夕方は病室の巡回を行いました。

「1人暮らしで、まだこの土地に慣れていなかったので、患者の病室を訪れて話をすることで、寂しさを紛らわせたり、患者の様子を見たりしていました。」とクェットさん。

仕事で忙しく、診察と手術に追われ、平均して1日に4回の手術に執刀するほどの暮らしの中で、まもなくホームシックも落ち着いていきました。

「山岳地方の暮らしはもっとのんびりだと思っていましたが、この仕事をしていると、信じられないほど早く時間が過ぎていきます。」

「何もかもがあっという間の出来事だったような感じですが、まだここにきて2ヵ月しか経っていません。」

クェットさんは、バックハー地区、ナムモンコミューンから来たモン族のスンセイサウさんに初めて行った内視鏡手術のことが忘れられないと言います。午後5時半ころ、病院スタッフがクェットさんの部屋に駆け込んできて、虫垂炎ですぐに手術が必要な患者がいると伝えました。クェットさんが行くと、痛みに耐えて口を真一文字に引き結び、お腹を手で押さえた男性がベッドに横たわっていました。診察をすると、すぐに40分ほどの手術を行いました。患者の息子のスンセイキーさんは、医師の術式に驚かされたと言います。

「虫垂炎を患った人を何人か見たことがありますが、父に行った手術はこれまでと違います」と、キーさん。

彼が見たことのある虫垂炎の手術では腹部に長い傷跡が残っていましたが、サウさんにはたった3つの点状の跡だけだったと述べました。保健省組織人事部のファムヴァンタック部長によると、貧しい地区や離島地域に若い医師たちの派遣を保健省が認可したのは2013年3月のことだったとのことです。これは、貧しい人々がより良い医療サービスを受けられるようにすること、大きな病院への不必要な患者の転院を減らすこと、都市部の病院のオーバーワークを緩和することを目的としています。この政策の下、医大の成績優秀者や、医師ボランティアが派遣候補者として選ばれることになります。2年間の専門分野の研修の後、男子医師は3年、女性医師は2年、貧困地区の病院へ派遣されます。貧しい地域での人材不足の緩和のために派遣される医師は300名から500名の見込みです。